鬼滅の刃 お労しや兄上ポタアンズン20巻

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言いたいことも杏仁。

 

作者コメントが大丈夫じゃない感じなんだが大丈夫なのか? 前巻で4000万部とか言ってたのが6000万部まで伸ばす爆烈ヒット。ここまでの急激な売れ方は前代未聞と思われるので、もう頑張ったから休め! って感じである。

 

本誌的には完結した様子。

 

コロナもあるし、アニメの展開もゆっくりだし、ある意味では仕事のペースを抑えて休める環境になってるんじゃないかと思う。気になるのはこれが一部完なのか、ってとこだけど。集英社は流石に次回作も週刊少年ジャンプから手放したくないだろうしよほど無理は言わないだろう。二部なら描きたいから二部だろうし、新作なら新作を上手くプロモーションすることを考えるはずだ。

 

サムライ8的なことにはならない。

 

話作りは手堅いんで描く限りは読めるものを出してくるタイプである。売れる売れないは別の話だ。むしろなんでこんなにブームが持続する売れ方してるのかが不思議なぐらいに独特のひんやりとした手触りがある。黒死牟との戦いが終わるところまで。

 

すごく内省的な話だ。

 

天才の弟に対する敗北感を引き出して勝つ。まとめるとこう言う話なんだが、よくよく少年マンガでやることかと疑問に思う。この後の無惨戦もそうだが、届かないものには決して届かないと言うシニカルさを保っているのだ。物語上の敵としては倒されているし、倒したことは間違いないのだが、読者の俯瞰した視点においては決してスッキリする話にはなってない。

 

むしろ重たく胃に残る。

 

鬼滅、と謳いつつ、人の心に宿ってる鬼はなんら退治してないんじゃないか? と感じないわけにはいかなくなってくる。主役側はみんないい奴らだが、マンガのキャラクターであり、鬼はどうしようもなく人間味を帯びている。

 

縁壱は怖い。

 

表紙の表情もなんとも言えずアンニュイである。この作中の世の理の外にいる天才はそれでも本人はなにも得られなかったと言う地獄の中にいるのである。それでいて、それになれないと踠き苦しむ兄に非の打ち所がない人格者とか思われているのである。地獄に地獄ソースをかけた地獄である。

 

言いたいことも杏仁。

 

お互いに言いたいことは言えなかった兄弟。だれもかれもが言葉ではあまり伝えられないまま刃を振るう物語だ。なんで売れてるのかわからない。ストレートに感動を揺り起こす悲劇ではないと思う。屈折してるし、ある意味では本人たちが無自覚ですらある。

 

何てことだ…

 

で、読みながら兄上の気分で泣きそうになってるのに挟まれる猫である。猫があれに見えてるのは地獄だ。カバー下の凧揚げ兄弟も地獄だ。どう言う気持ちで読めばいいのかポタアンズン。この言葉の意味がわからないベイベーポタアンズン。280万人を困惑に叩き込むポタアンズン。怖い。