鬼滅の刃 恋愛ものも描けるとは器用なことだ18巻

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そして初版100万部の景気良さである。

 

アニメが良かったから爆発的にヒットした、と言うのは事実だけど、爆発力自体は原作が蓄えてた力だなぁと感じる。狛治と恋雪、上弦の参であり因縁の相手との決着に出されるとんでもなく残酷な恋愛ドラマである。

 

敵だからね?

 

読みながらまぁ、斜に構える訳ですよ。はぁ? そんな美少女との過去とか恵まれてんなぁ、みたいな。多少のことでは同情もしないぞ、みたいな捻くれた心構えで挑んでがっつり泣かされて困る。

 

いやいや。

 

毒は悲劇演出としてちょっとやりすぎでしょ、相手そこまでする理由ある? と、疑問に思うところは幕間の文章で淡々と埋められててこの作者が手練れすぎて困った。つーか文章が上手いわ。なんとなく感じてたけど、2ページまとまったストーリーを読まされたら、この抑制の利いた文章と、マンガとして出してくる力強い演出力の噛み合わせの強さを感じる。

 

なんでも描けるな、この人。

 

少年ジャンプでそこまで描こうとしたら止められた、とするなら編集の判断はある意味で正しいと思う。鬼になってやったことを踏まえても、たぶん狛治にもうちょっと救いをやるべき加減になる。実際のところ、仇討ち感がこの戦いからなくなっちゃってるからな。

 

勝っても虚しい。

 

なにひとつ救いがないな、と言う意味で無惨へのヘイトは高めてるし、次の童磨がそれなりにクソ野郎なんでバトルとしてのテンションは保たれてるけど、手綱を見誤ると読ませるけどジャンプじゃなくなるスレスレの綱渡りをしてる。危うい。

 

これほどの売れっ子がするりと逃げるぞ?

 

ストーリーテラーとしての才能が溢れてるんで次回作への期待は高まるんだが、ジャンプの枠組みに収まる気はまったくしない。アニメが終わるまではもうキメツ学園描いてもらった方がいいな。学園もの描きましょう。あんまり哀しくないやつで! って言っといた方がいいぞ? ジャンプから出て行った方がたぶんいいマンガ描くタイプだもの。

 

売れる売れないは別として。

 

割と久方ぶりの大ヒットなんで、そう手離さないだろう。でも、自由に描かせたらすぐ傑作をものにしそう。ジャンプで売れなさそうってタイプでもあると思う。結構、編集が悩みそう。売れっ子だけど、この才能を少年向けに費やしていいのかわからない。青年誌かなんかで恋愛もの出したらするーっとドラマ化するぐらいのポテンシャルは感じた。どこで描いてもなんとかなるやつだ。

 

だからジャンプに留まって盛り上げて欲しいけどね。

 

ただ、正直言ってなんでジャンプで描いてんだろって感じは強くなってる。恋愛と血みどろと、バカな母親の話と、18巻はかなりエグみがある。ここまでの積み上げがあるんで読者はついてきてるが、面白いのに無惨戦がすっきり終わると言う安心感はむしろなくなってるのではないだろうか。どんな話でも描けそうなだけに、どうなるか読めないと言うより、どうとでもしてきそうなのが怖い。

 

全滅エンドが個人的に最有力。