ONE PIECE 第26話

“キャプテン・クロの一計”を読み返しました。

 

おれは ただ政府に追われることなく

大金を手にしたい

つまり 平和主義者なのさ

 

3年の月日をかけ、信頼を得て莫大な財産の相続が自然となる状況を作りあげる。海賊が溢れかえってる世界でこんな地道な努力をする犯罪者ってなんだろうとちょっと思う。

 

そもそも海賊になった理由は?

 

ジャンゴに対して計画を説明してルフィとウソップに聞かれる話なんですが、催眠術で崖から落下して死亡と誤認されるルフィはともかく、ウソップをここで生かしたことにその理由があるんじゃないかと思うんですよね。

 

メタ的に言えばオオカミ少年をやるため。

 

けれどもクロの視点から言えば、計画に支障はないと言えど、ウソップを生かしてひとりでも村人を逃がせば自分の正体を知る人間が残ることになり、政府に追われないと言う目的は達成されない可能性は出てくる。ジャンゴたちは始末するつもりでも、村人全員皆殺しでは生き残ったら自然な相続どころじゃない。

 

ウソップとクロは似た境遇だったのでは?

 

ウソつき同士と言うのはすでにわかってることですが、カヤの前でウソップを煽ったセリフは別に言わなくてもいいことだった。でも言わずにはいられなかったように見える。それこそ一年も通いつめてたお嬢様に近づく悪い虫なんだから信頼のためにもとっくに排除してないのがおかしい。話の都合とか言い出すとアレだけど、そこには見逃した理由があって然るべきだ。

 

クロも海賊の息子。

 

結論としてはそう言うことになるんじゃないだろうか。いってて三十代、大海賊時代の子である彼が、船長をやり、かなりの信頼を得るぐらいの実力を持ち、しかし最終的には嫌気がさしたのも、根っこにある海賊への悪感情だろうと推測するのはそう的外れとも思わない。

 

ウソップに自分と同じ絶望を与えたかった。

 

何か企みがあるという理由など

君の父親が海賊である事で充分だ‼︎!

 

これはクロがかつて受けたセリフなのではないだろうかと思う。海賊の息子でありながら、どこか村人に暖かく見守られておせっかいなウソつきとして明るく生きてるウソップはクロからすれば目障りであったんじゃないか。神経質そうな性格ゆえに親を誇りと思って生きることができなかっただろう彼からすれば、羨ましかった、かもしれない。

 

なぜかカヤの両親は殺さなかった。

 

もちろん生きていれば催眠術で遺書を書かせる相手が変わって家族全員皆殺しの計画だったとは思うんだけど、ジャンゴに対してまで、あえて計算外と告白する理由はないし、非情な計算高い悪役としての印象を残すことを考えたら、別に殺してたでもストーリー上の問題はない。けれど、あえて殺してないことを強調してる。親の不在と言う共通点をウソップとカヤとクロに持たせることで、この三者の交錯する話をまとめようとしてたんじゃないかなと言うのは考えすぎだろうか。

 

悪役の悲しい過去はウザがられがち。

 

実際ONE PIECEにしてもそう言う批判が出るエピソードがないわけでもない。とは言え海賊の時代にそれによって人生を狂わされた人がいないとするのはおかしいことだ。善人にも悪人にも過去はある。クロの過去は想像だけど、そう言う奥行きは積み重ねた連載の歴史として読み返すなら感じてもいいはずだ。