ONE PIECE 第195話

“Mr.武士道”を読み返しました。

 

獅子歌歌回。

 

ここにビビがノリでつけたあだ名を持ってくるのはなんでだろう? と当時から気になるサブタイトルだった。死ぬことと見つけたり葉隠の精神なんだろうかね? 自分が死ぬことで周りの生、呼吸を感じ取る境地に達した、みたいな解釈はできるかもしれない。

 

押して押す事

これが“豪剣”の極意!!!

 

師匠の言葉の意味がさっぱりわからないので基本に立ち返るゾロ。技を繰り出すと言うより本当に相手を押す動きはミホーク戦の再現って感じもなくはないけど、技量的にはMr.1を確実に上回っていて蟹獲り、と言うここでしか出た記憶のない技なんかは完全に首をぶった斬る当たり。三刀をどう動かしてるのかはさっぱりわからないが斬れない相手もキレる勢い。

 

螺旋抜斬。

 

Mr.1の技の中でスパスパと関係があるようなないような謎の腕捻り回転斬。捻って斬るまではいい?が、回転し続けるのは人体としておかしいだろ、ゴムじゃあるまいし。とは言え抉り斬るインパクトはなかなかだし、火花が散って刀を弾かれることでもう剣士としての戦いは終了になる。

 

鉄は斬れるか斬れないか。

 

殺し屋がとどめを刺すと言う段階で、ゾロは再び背中を向けないように相手の攻撃を受ける。剣士の恥である背中の傷だけは避けようとした時点で二度と負けないと言う誓いは実はもうここで折れてるとも言える。ゾロは死んだ。

 

アイツら

みんな…

無事なのか

 

立ち上がったゾロのモノローグ。崩れ落ちてきた建物の石柱やらなんやらを避けた訳ではなく、落ちてこない場所がわかった。死の境地。Mr.1は殺した手応えを得ていて汗を見せる。

 

気配じゃねェ…

もっとくっきりとした…

まるで

“呼吸”…

 

落石から感じ取れた呼吸をきっかけにゾロは何も斬らないことの意味を把握する。ここはONE PIECEの中でもかなり珍しく感覚的な描写のところだ。少年マンガとしての明確さを心がけているからか読者にわからないようには描かない傾向が強い作風の中で浮いてると言ってもいい。

 

刀に意志が伝わる…

 

木の葉をズバッっとやっても斬れず、石に対してはストンとやるだけで斬れる。呼吸を知れば、斬れると思えば斬れる。それがゾロの結論であり、あとは実力の問題。で、獅子歌歌である。居合であること以外、太刀筋そのものがわからないがやたらカッコいい見開きは説明不要だろう。

 

礼を言う

 

勝利である。鉄の呼吸を知り、斬れる実力があったので斬れた。それ以上でも以下でもない。このエピソードの盛り上がり方とは裏腹にすごく淡々とした答えだ。演出力の高さに唸らされると同時に、ゾロが勝つのは実力が上だから、と言う絶対的な縛りができた形でもある。

 

少年マンガの主人公チームの実力者でありながら、番狂わせみたいなのがあんまり記憶にないのがゾロだ。格上に勝った、と言うシーンが思い出せない。これは結構凄いことのような気がする。人気キャラの名勝負と言ったら大体ジャイアントキリングなのに、ゾロにはそれがないのだ。

 

世界一になるまではすべて実力で勝つ。

 

それがMr.武士道。と言うことなんだろうか。死ぬことと見つけたり。ゾロはなんだかんだ常に自分より一味を優先している男なんでその実践がこの物語の中でどう結実するのか楽しみである。まだまだ強くなれる、本人と読者がそう思っている内はまだまだなのだ。頂にどう押し上げるのか……。