雪かきの辛いところは暑さだ。
防寒をしっかりしないと凍えるが、防寒は過剰な体の熱も逃さない。しかし暑くなったからと言って脱げばすぐさま全身は冷え切り風邪をひく。
そして雪かきは単なる準備作業だ。
やらなければならないが、やったところがスタートラインでしかない。本当にやるべきことは暑くなって疲れたところからはじまるのである。泣ける。
しかしこの悩みも大したことはない。
豪雪地帯ではない単なる雪も降る地域の話であり、台風ほど話題にはならないけど、確実に死者を毎年出しながら生きていく地域と比べたらぬるい。
そこそこの辛さとは語りにくい辛さだ。
痛みに対しての痒みだとか。
貧困に対しての裕福でなさとか。
同僚が仕事をちょっとサボってこっちに押し付けてる、感じがする。ちょっと、と言うのがミソで指摘するとなんかこっちがことを荒だてていることかのようになりそうなのが嫌だ。
要領よく生きたい。
寒いから心が狭いのだ、と自分に言い聞かせながら、しかし確実に同僚を憎む気持ちが育っているのを感じる。別に嫌いな人間じゃなかったはずなのに、どこかでキレてやるシミュレーションをしている。
全てを捨て去りたい。
破滅的願望の規模が小さい。
人間の小ささも語りにくい。